本帰国後

ふるさと納税の『返礼品』は一時所得に該当。確定申告の対象にならない条件とは?

ふるさと納税を行うと、自治体から送られてくる『返礼品』。
各自治体の特産品としてお米などの食料品から家電、商品券などさまざまなジャンルの商品が返礼品として提供されていますが、これら返礼品をまとまった件数受け取ると、所得税法上、一時所得として確定申告が必要になる場合があることをご存じでしょうか?

なぜ『返礼品』が一時所得に該当するの?

一時所得はどういった所得でしょうか。
簡単に言うならば臨時収入が該当します。

懸賞金や競輪や競馬の払戻金、生命保険の解約返戻金などが具体例としてよくあげられますが、所得税法上、一時所得に該当するためには以下の条件が必要とされています。

・営利目的の継続的行為から生じた所得以外
・労務や役務の対価としての性質を有しない
・資産の譲渡による対価としての性質を有しない
国税庁HP NO.14 一時所得

返礼品は経済的利益の無償の供与である”寄付”を行うことで受け取るので、営利目的でないことは明らかです。
返礼品を受け取るために”寄付”を行っているわけではなく、”寄付”の対価はあくまで寄付金控除と言えることからも労務や役務、資産の譲渡の対価にも該当しないため、返礼品は一時所得に該当する、と考えることができるのです。

返礼品をもらった必ず確定申告が必要なの?

今まで『返礼品』について確定申告を行ったことがない!とご不安に思われた方もいらっしゃるかもしれません。
実務的には、多くの方が確定申告が不要のケースに該当しています。
なぜでしょうか?

理解を深めるために、まず、一時所得の計算式から確認していきましょう。
計算式は次の通りです。

一時所得の金額=一時所得の総収入金額①ー収入を得るために支出した金額②-特別控除額(50万円)

①「一時所得の総収入金額=返礼品の金額の年間合計額」となります。

 返礼品の金額は、2017年4月総務省が全国の自治体に通知した「寄付金のお礼の品の返戻率(還元率)は3割以下」を根拠に「寄付金額×0.3」で求めます。
(返礼品の求め方は時価も可能。ただしきちんとした根拠が必要。)

②「収入を得るために支出した金額=0(ゼロ)」のため、計算に考慮しません。したがって

一時所得の総収入金額(寄付金額×0.3)ー特別控除額(50万円)<0(ゼロ)

の場合、一時所得が発生しないことになり、確定申告の検討は不要、ということになります。
また、逆算すると特別控除額50万円で収まりきらなくなる寄付金額は167万円になります。
(167万円×0.3=50.1万円)

どうでしょうか、寄付金額が167万円以上になることはそうそうないかと思います。
これが、多くの方が確定申告が不要のケースに該当する理由です。

では167万円が寄付金上限額となる給与収入はいくらぐらいなのでしょうか?
家族構成にもよりますが、目安としては額面で4,000万円以上の方から、となります。
(参照:総務省 ふるさと納税ポータルサイト「全額控除されるふるさと納税額(年間上限)の目安」)
高収入・富裕層の方々だけが関係ありそうと思われがちですが・・・決してそうではありません!

ふるさと納税と同年度に他に一時所得が発生している場合は要注意!

ふるさと納税の他に一時所得がある場合、例えば生命保険の解約返戻金の受取から一時所得が発生している場合、給与収入が300万円の方でも、1000万円の方でも確定申告の検討が必要になるケースがあります。

具体例で確認してみましょう。

<前提>
◎給与収入 1,000万円 (夫婦または共働き 18万円が控除額上限目安)
→ふるさと納税額年間18万円実施
◎生命保険の解約返戻金あり 解約返戻金額800万円(支払い保険料600万円)

<一時所得の計算>
前述の計算式に当てはめて計算すると以下の通り一時所得は155.4万円と算出。

総収入金額805.4万円①ー支出600万円②-特別控除50万円=155.4万円

①総収入金額
5.4万円(返礼品額18万円×0.3=5.4万円)+800万円(解約返戻金額)=805.4万円
②支出した金額
600万円(支払い保険料)

<確定申告が必要かどうか?>
特別控除額50万円を控除してもなお155.4万円の一時所得が発生している。確定申告が必要。

なお、所得税の税額計算においては一時所得は給与所得や事業所得などほかの所得と合算して、総合課税の対象です。
一時所得の金額×1/2が一時所得の課税金額となるため、上記の例では77.7万円が課税対象額となります。

まとめ

ふるさと納税の返礼品と確定申告はなかなか結び付かないですよね。お礼としてもらったのに!と考える方がほとんどかと思います。
返礼品は一時所得に該当しますが、寄付金額が167万円を超えなければ、一時所得の特別控除額50万円以内で収まるので、確定申告の心配はしなくて大丈夫です。

給与収入が額面4,000万円を超える方においては、家族構成により寄付金上限額が167万円を超えてきます。一時所得を発生させてたくない場合は、寄付金上限額167万円を意識すると一時所得の特別控除額50万円の範囲内で納めることが可能となり、確定申告時に一時所得の申告が不要となります。

個人的には生命保険の満期返戻金、解約返戻金が一時所得の代表例だと思っています。100万円を超える一時払い等一定の返戻金の場合、生命保険会社から税務署に支払い報告が行われており、税務署側もしっかりと一時所得の発生を把握しています。うっかり、確定申告をし忘れてしまうと、税務署から「申告漏れ」として申告をお願いされます。その際に、ふるさと納税の返礼品も同じ一時所得として計算し、所得税額を支払うことになります。

ふるさと納税をされている方は毎年、今年の限度額はいくらだろう・・?と気にされながら寄付をされていると思います。生命保険の満期返戻金、解約返戻金のように他に一時所得が発生している年度について、一時所得にかかる税金を発生させたくない場合は、想定していた限度額よりも低い金額が実質的な上限額となることが想定されます。どうぞご注意ください!