海外赴任前

海外転出届を提出しないと、海外で在留証明書を発給してもらえない?

海外で在留証明書を発給してもらう際に、「日本で海外への転出届を提出していること」が、発給の条件の1つになっていることがあることはご存じでしょうか?

在留証明書とは?

在留証明書とは、海外の在外公館(日本大使館)が発給する行政証明書です。

外国に居住している日本人の、現地での現住所や、現地での転居歴を証明してくれるため、「海外での住民票」と言えるでしょう。

在留証明書が必要になるのはどんな時?

在留証明書が必要になるのは、一般的には下記のような場合です。

  • 恩給や年金手続き
  • 不動産登記手続き
  • 遺産相続手続き
  • 自動車売買
  • お子様の日本での受験手続きや転入手続き

これらの手続きは、現住所の確認を必要とするため、海外での住民票である在留証明書の提出が必須となっています。

では、在留証明書を発給してもらうために必要なことはどんなことでしょう?

在留証明書の発給条件とは?

在留証明書の発給条件の概要については、外務省のHPに下記のように記載があります。

  • 日本の国籍を有する方(二重国籍を含む)のみ申請ができます。
  • 現地に既に3ヶ月以上滞在し、現在居住していること。但し、申請時に滞在期間が3ヶ月未満であっても、今後3ヶ月以上のの滞在が見込まれる場合には、発給の対象となります。
  • 証明を必要とする本人が公館へ出向いて申請することが必要です。
                                     外務省HPより 

ここだけ確認すると・・・

あれ?発給条件に日本での転出届についての記載がないから、関係ないのでは!?と思いますよね。

実は、発給条件について「ただし書き」があります。

ただし、発給までに要する日数や開館日、申請受付時間は現地の事情や業務量等により異なりますので、詳しくは証明を受けようとする在外公館に直接お問い合わせ下さい。

外務省HPより

つまり、外務省として発給条件の概要は明記しているものの、発給にかかる事務手続き等含め詳しくは、在留証明書を発給してもらいたい現地の在外公館の発給条件を確認する必要がある、ということになります。

したがって、次に居住先の在外公館のHPで発給条件について確認すると・・・この段階でようやく、転出届と在留証明書の関係がわかります!

転出届を提出していないと、在留証明書が発給されない?

各在外公館のHPにて、在留証明書の発給条件について、どのように記載されているでしょうか?
いくつかの国のケースを確認してみたいと思います。

まずは、アメリカ、在ニューヨーク日本国領事館のHPです。

<申請条件について>

Q.日本で住民票の転出届をだしていません(住民票を抜いていない)が、在留証明は申請できますか?

A.在留証明は住民票の代用として発給するものですので、原則、日本に住民票が残っている方には在留証明書は発給していません。

在ニューヨーク日本国領事館HP、在留証明に関するよくある質問集より

次に、タイの在タイ日本国大使館のHPを見てみましょう。

申請要件

  1. 日本国籍者であること。
  2. 書類によりタイの現住所に居住していることを立証できること。
  3. タイ国に3か月以上在住していること、又は3か月以上の滞在が見込まれること。
  4. 日本に住民登録がない(海外転出届をしている)こと。

在タイ日本国大使館HPより

その他にも、インドネシア日本国大使館や在英国日本国大使館等、多くの国で、

「在留証明書の申請条件のひとつに、海外転出届を提出していること。」

を、あげています。

しかし、一方で在留証明書の申請条件に「海外転出届を提出していること」がない国もあります。

例えば、シンガポールです。

在留証明書・注意事項

  • 在留届が大使館に提出されていることが必要になります。
  • 証明書上に最終提出先を記載する欄があります。最終提出先をご確認の上、ご来館下さい。
  • 原則として、申請者が直接来館の上、手続きを行ってください。

                                在シンガポール日本国大使館HPより

実際、シンガポール滞在時に、大使館で在留証明書の発行を依頼した際に、職員の方から在留届が提出済みかどうかの確認は行われましたが、転出届が提出済みかどうかの確認はありませんでした。

つまり、在留証明書の発給に転出届の提出が条件になっているかどうかは、まさに前述した外務省のウエブサイトに記載があった通り、各在外公館の判断によっている、と言えるのではないでしょうか。

海外転出届を提出するか、しないかの判断にも影響が?

海外赴任時に、海外転出届を提出して住民票を抜くか、抜かないか、はよく話題にのぼります。

住民票を残していくことにメリットを感じ、海外転出届を出さずに、出国し、想定外に日本で相続が発生してしまった場合を想像してみてください。

あなたの赴任先の在外公館では転出届の提出が申請条件だった場合、このままでは在留証明書は発行出来ません、と言われるかもしれません。相続の申告は期限があります。その期限内に在留証明書が発給されるように、日本国内へ転出届の郵送手続きをするところから始めることになると、時間との闘いも発生します。

個人的には、自分の現状を正確に反映しておくことは、より安全に安心して海外生活を送ることになると思っています。ただでさえ、海外での生活は色々と心配事が付きないと思います。不安の種をあらかじめ除いておく、というのも海外生活をしていく上で大事なことではないでしょうか。